初めて「撮影」を意識したのはいつだっただろう？曖昧な記憶を辿り思い返してみると小学6年生か中学1年生の頃だったかもしれない。実家の庭でレンズ付きフィルムを使って怪獣のフィギュアを撮影していたのが最初だったように思う。ファインダーをのぞいていると「自分だけの新作映画のワンシーン」がそこに広がっていた。撮影の知識もなにも持っていない、ただ「撮りたい」という想いだけでシャッターを切っていた。その時の上がりが酷かったのはよく覚えている。

「INside (me)」はこの1年間の間に撮り下ろした作品で構成されている。被写体は自然風景。ギャラリー内に展示されている作品は計31点。自分好みの作品だけ集約している。改めて作品を見返してみると「快晴」よりも「曇天」や「雨天」に撮影していることが多い。予定していた撮影日が天候が悪かったのではなく、天候が悪い日にあえて撮影に出掛けていることが多かった。そう言う光や質感が好きなのだ。撮影地も名所と呼ばれる場所よりも身近な場所が多く、自分がそこにいて「心地良い」「気持ちが良い」と思える場所を優先している。自分の好きな自然の中で自分自身と向き合った結果が「INside (me)」である。

　本展は、私の「好き」の集合体でありプロフィールのような展示となっている。タイトル「INside (me)」は自分の内面を自然の中でレンズ越しに具象化する行為を文字に置き換えたもの。レンズ越しの世界を見るのはいつまで経ってもワクワクするものだ。ワクワクを感じられると実家の庭で怪獣のフィギュアを撮影していたあの頃の自分と何も変わっていないなと安心できる。今の私も「撮りたい」という想いでシャッターを切っているのは変わらない。私のフィルターを通じてカタチになった作品を見て一人でも多くの方に「なんかいいな」と思っていただければ嬉しいのです。
 

​写真家 木村琢磨